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南アルプス:仙丈ヶ岳
南ア・仙丈ヶ岳紀行(35) 「山の霊力」

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(標題はブログにリンクします)


 南ア・仙丈ヶ岳紀行(35) 「山の霊力」  .



更に、『人はどうして山に入るのか・・?

それについて明確に答えられる人は少ないであろう。 
或は言葉では表現できないかもしれないのである。

しかし、高い山、形のいい山、荘厳な山には俗界とは違う何かがあるはずである。
かって、山に居る人を字のごとく「仙人」と称した。 
下界に居る人を字のごとく「谷の人」、つまり「俗人」とした。 

山に凄む人を仙人(せんにん)と称したのは中国の教えであり、仙境にて暮らし、仙術をあやつり、不老不死を得た人を指した。

仙人は主に高い山の上、天上などの仙境(神仙郷、仙郷、仙界)の地に住み、俗界と離れた静かで清浄な所、神仙(神霊)が住むような理想的な地で修行をしたとされる。


中国の静的な仙人に対して、日本では古来より動的な仙人がいた。
山に凄む妖景である神や仏(神仏混交の時代)の霊力を得んと、山伏(やまぶし)という山の中をひたすら歩き、修行をする修験道の行者がいた。 
修験者」とも言う。

修行者は「修行して霊力を身に着け、迷妄を払い、験徳を得る」ことから修験者、又は山に伏して修行する姿から山伏と呼んだ。


日本各地の霊山を修行の場とし、深山幽谷に分け入り厳しい修行を行うことによって超自然的な能力、験力を得るのである。 
つまり、山の妖景や魔力をこの身に宿して、衆生(しゅじょう)、俗人に伝える専門的集団なのである。
又、同じ山域を一日も休まず何百日も駆け巡って、霊力、験徳を得る修行もある。
比叡山で行われている「千日回峰行」などもその一つであろう。

尤も、現在でも在家の山奉信者が、修行の時だけ山伏となって修行する人も多く存在するようだが。
何れにしても、山の霊力を得んとして山に入った仙人達であった。


次回、「山の修行者




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 南ア・仙丈ヶ岳紀行(36) 「修行者」  .


 
 山の妖景(仙丈ヶ岳;シラビソの純林帯)


今、小生はたった一人で黙々と、ただひたすら(仙丈ヶ岳)に向かって歩いている。
それは修行者のごとく、否、修行者の真似事でもしているようなこんな感覚でもある。
修行者といえども瞬間々々の身体に感じるもの、心の動きは我ら凡夫とは大差はないであろう。


去る年、穂高をやって涸沢からの帰り道、徳沢と明神の丁度中間地点あたりで、突然のにわか雨に襲われた。 
徳沢と明神は凡そ1時間の歩程であり、更に、明神から上高地までも1時間の道程である。 
道中、付近に雨宿りできる場所は全くない。

にわか雨はアッという間に土砂降りになり、激しい雷雨となった。 
山での雷は恐ろしく雷雲に近いため、光と音とが同時に発生する。
天が裂けるほどの稲妻、大地が震えるほどの雷鳴、そして激しく降り注ぐ豪雨。

雨具を出して身に付けようと思ったが、既に全身ビショ濡れである。 
今更、着被っても始まらない。 
濡れるにまかせた。 

濡れるに任せていて、はじめ動揺したが直ぐ我に返り、真夏の突然の雨だし濡れるのもまんざら悪くないとも思われた。
其のうち、心までもが洗われて、何か清々しい気持ちになって来るのを覚えるのである。

そのとき、不思議と体の奥から熱き血潮が沸き上がってくるのを感じた。 
身体は危機を感じて精神より先に、最大能力発揮の体勢をとってしまったようだ。
冷雨もシャワーに感じ、雷鳴もめったに味わえない大自然の音響(サラウンド)として楽しめてしまうのであった。

こうなると雨よ降れ・・!、 雷よ唸れ・・!、である。
修行者の気持ち、不動心の心構えとは常にこのようなものではないだろうか・・?



ふと横気が付くと男女の四人グループが後ろから駆け足で追いついてくる。 
上高地に散策に来た普通の観光客で、当然ながら好天であったため雨具や着替えなどは用意してないらしく、顔面蒼白になって慌てふためいている。

小生は普段の姿勢で悠々と歩を運び、半ば精神的な余裕もあったので、遂、声をかけてしまった。

「 たまには、雨に打たれるのも良いもんでしょう 」

すると、グループの一人の女性が

“ 何言ってんの、あの人・・!? ”

と捨てぜりふを発して去っていった。


棒のような雨はますます激しく身体に打ちつけ、雷鳴も耳をつんざくほどであった。

実は、小生ザックにだけはビニール風呂敷で濡れ防止を施しておいた。 
そして上高地へ着いたら新しい衣類に着替えるつりでもあったのだが・・!!


次回、「樹林帯の急坂




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